【書評】ルメートル著『監禁面接』が最高だと感じた6つの理由
- 2020.03.15
- 書評


ズバリ、この作品を読んだ評価は
★★★★☆
一言で表すなら、
奇想天外!? 怒れし中年男の大逆襲
といったところでしょうか。w
筆者の最も敬愛するピエール・ルメートル氏の作品です。
『その女、アレックス』でも有名な作家さんですね。^^
本作は小説を読んで滅多に面白いと感じない。そんな不感症(?)な筆者が自信をもって人様にお薦めできる数少ない作品です。(笑)
まず導入において不幸のどん底にある主人公。
はい、この次点で、もう掴みはバッチリです。(笑)読者は借金苦や失業、恋人がDVなど登場人物が不幸であれば不幸なほど感情移入しやすいからです。
これは上手いやりかただなと思いました。
その後、ある会社の採用試験に飛びつくのですが、当然、普通の企業なんかじゃなくって、それからあれよあれよと主人公の転落人生が始まります。(笑)
普通なら、その辺りで何か変化というか、どんでん返しが起こるのですが、これがなかなか起きない。いったいどこまで落ちていくんだと。(笑)
このまま最後まで転げ落ちていくのかと思いきや、とんでもない事態に。(笑)ああ!そういうことだったのか!と。
良い意味で裏切られた感に満たされました。これって実は小説では凄く大切なことです。読者は自分を騙して欲しいんです。裏切られたいんですね。
そういう意味では本作は完璧な展開でした。
導入部分やコンセプトとしては海外ドラマ、『ブレイキングバッド』を思い出しました。
というより、この作家さん絶対映画好きだろって。(笑)
前作も『セブン』に似たのがあったし。(笑)
まあ、それを上手く自分のものにしてるというか、独自にアレンジしてるので気になることはないのですけどね。^^;

☆をマイナス1にしたのは、この作家さんの持ち味でもあるのですが、リアリティに欠けたぶっ飛びすぎた設定からでしょうか。
いや、いいんですよ? 小説は所詮、作り話だし、読者に夢を見せるものです。言い方は悪いけど、リアリティなんてクソ食らえってなもんですわ。
それを言いだしたら異世界やファンタジーなんて設定は以ての外ってなっちゃう。
でも、荒唐無稽なら荒唐無稽なりの説得力というかね。読者を納得させるだけの説明や具体性を持たせてやるべきなんじゃないかと。
本作には、その点の配慮が少し欠けていたというか。少なくとも筆者は随所に『んな馬鹿な』ってなっちゃう点がちらほらあるにはありました。
特に失業中のオッサンとは思えない洞察力の鋭さ。思慮深さ、超人的な計画。とても素人のそれではないです。(爆)
まあ、話が面白過ぎちゃって、そんなのは吹っ飛んでしまいましたが。(笑)
なので、この点は単なる重箱の隅です。
もし、皆さんが興味を持って読むことがありましたら、気にしないで楽しむことを強くお薦めします。(笑)
ストーリー
重役たちを襲撃、監禁、尋問せよ。どんづまり人生の一発逆転にかける失業者アラン、57歳。企業の人事部長だったアラン。リストラで職を追われ、失業4年目。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今はアルバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが人材派遣会社の社長じきじきに告げられた最終試験の内容は異様なものだった。残酷描写を封印したルメートルが知的たくらみとブラックな世界観で贈るノンストップ再就職サスペンス! ※内容(「BOOK」データベースより)
こんな人にオススメ!
- 最近、面白い小説がないので探してる
- 海外の映画、ドラマ、小説が好き
- 昼ドラみたいな人の不幸話が好き
- 面白ければ細かい突っ込みどころなんて気にしない
- とにかくスカッとしたい
- 緻密な心理戦、頭脳戦を堪能したい
■最近、面白い小説がないので探してる
はい、そう思ってるそこの貴方! もう読むしかありません。(笑)
筆者も100冊くらい読んで、どれもイマイチだなーと思って満足にラストまで読んだことのないダメ読者でした。(どうやら筆者は他人とは違った感覚? ストライクゾーンが狭く、よほど面白い作品じゃなければ満足できない体質のようで。^^;)
しかし、そんな中、出会ったのがこの作品だったわけです。(何か健康サプリみたいな文句やな。w)
仮に筆者が五本の指に入る作品を言えと言われたら、まずこの作品がノミネートすることでしょう。w
とにかく、この作家さんは読者のツボを押すのが上手い。どんな設定でどんな展開にすれば読者が楽しめるか。痒いところに手が届くというか。そういった点を常に熟知しているように見受けられます。
これって、なにげに凄いことです。同時に難しいことでもあります。
だって、こういうのを理解してない作家さんが殆どなんですから。(笑)
勿論、趣味は人それぞれ。面白いと思うのも人それぞれ。或いは、つまらないと感じる方だっているでしょう。
でも、根底にあるテーマは決してつまらないものではないし、皆、誰しもが共感する部分があると断言できます。特にラストに限ってはね。
ご家族を持ってる方は心臓鷲づかみ必至です。
なので、騙されたと思って是非、一読あれ!(笑)
■海外の映画、ドラマ、小説が好き
前述したように本作の著者であるピエール・ルメートルさん。
きっと、かなりの映画、ドラマ好きです。
『あれ、どっかでみたぞ?』
みたいな映画ファンなら分かるようなシーンや展開が随所に散りばめられています。(笑)
これをパクリと呼ぶかどうかは評価が別れるところではありますが。^^;
調べてみると前職はテレビの脚本とかも書かれていた方のようで、なるほどと頷けました。
なので、作品も自ずとエンターテイメントに寄るというか、あまり小説小説していない世界観が、この作家さんの持ち味といえるでしょう。(まあ、作品によっては文学色が強いのもあるにはあるんですが^^;)
■昼ドラみたいな人の不幸話が好き
恥じることはないです。(笑)
人間は誰しも他人の幸せ話より不幸話の方が好きな生き物なのです。勿論、筆者とて例外ではありません。(爆)
その中でも、特に群を抜いて不幸話が好き。まさにエクスタシー! 蜜の味だぜ! ヒャッハー!って方にとって本作は打ってつけといえるでしょう。(爆)
何故なら冒頭から中盤にかけて、主人公は不幸を絵に描いたような生活にあるから。
童話『シンデレラ』のオッサンバージョンとでもいうのか。(笑)
ボロ雑巾のようにズタボロになっていく、中年男の悲壮感がこれでもかというくらい堪能できます。
■面白ければ細かい突っ込みどころなんて気にしない
よくいるじゃないですか。
映画やアニメを観てる最中『そんなわけない』とか『現実じゃ絶対、ありえない!』とか突っ込み入れる人。(笑)
別に批判とかするつもりはないですけど、これってすごく勿体ないことなんじゃないかと思います。本人にとっても不幸です。
だって黙って見過ごしていれば、純粋に凄くいいシーンだったり、思わぬ感動を味わえたかも知れないのに、そうすることによって全て台なしになってしまう。(笑)
そりゃ、物語なんですから、ありえないことが起きたり、現実味がないのは当たり前です。それを言いだしたら、世の中の殆どの作品が『ありえない』の一言で一蹴されてしまう。(笑)
まあ、この作品にいたっては既に前述したように、それがより顕著に表れているわけですが(笑)
なので、比較的、リアリティ重視の方、ノンフィクションの方が好きだという方には正直、お薦めしません。
■とにかくスカッとしたい
この物語の醍醐味はラストに集約されているといっていいでしょう。
これまで積み重ねられてきた伏線、悪役に対して溜まりに溜まってきた怒りメーターは最後に一気に解消されます。(笑)
ちなみに筆者はこれを『必殺仕事人』メーターと勝手に読んでます。(爆)
勿論、本作の主人公はスーパーマンでも元CIAのコックでも、ランニング一丁でテロリストと戦う刑事でもありません。単なるくたびれた素人のオッサンです。
なので、ど派手なアクションなんてのは皆無。
しかし、その代わりに頭を使った駆け引きがあり、主人公は銃を使う代わりにボイスレコーダーを使い、肉体を使う代わりにブラフを使います。
勧善懲悪ものが好きな人には是非、味わって欲しいし、きっと特に印象的なラストになるでしょう。
筆者がそうであったように。
■緻密な心理戦、頭脳戦を堪能したい
これこそ、まさに本作の醍醐味。
知識や経験、戦闘能力では遠く及ばない強大な敵を相手に、素人のオッサンがどう戦い果敢に挑んでいくか。
こういったテーマに加え、常に読者の予想を裏切る知的な展開が、この作品のページを読者に捲らせる原動力といえるでしょう。
この作品が頭脳戦を描いた最高峰とまでは言いませんが、それを感じさせるだけのポテンシャルを持ち合わせているのは確かです。
良かった点
- とにかくストーリーが飽きさせない
- 一切の中だるみがなく、テンポがいい設定が斬新、先が読めない展開
- 海外映画、ドラマにも通ずる世界観、優れたエンタメ性
- 起承転結の“転”が凄い、作家はお手本にすべし
- 皆が共感するであろうラストに隠された深いテーマ、家族持ちは読むべし
悪かった点
- 荒唐無稽な舞台、キャラ設定。ハチャメチャな展開。それについての説得力が弱い
- 主人公の取った行動のひとつひとつに(?)な点も。人によっては共感できない場合も?
総評
あくまで個人的な意見ですが筆者の場合は面白さが全て。
文や構成に違和感があったり設定に若干の無理があっても、それを引っ繰り返すだけの面白ささえあれば気にしない性分なので、この作品は難なく受け入れられました。
逆に言うと少々内容に荒さがが目立ったり、馬鹿馬鹿しさが鼻につくタイプの方は読むのはやめた方がいいかも知れません。
もっと地に足のついた作品を読んだ方が遙かに時間の浪費を抑えられるでしょう。
この作品はそんな物語。(笑)
しかしながら筆者と同じ、海外ドラマ「ブレイキングバッド」にハマった方、ジェットコースターみたいな起伏激しい展開が好きなら必ずといっていいほど面白く感じるはずです。
そうでない方でも復讐劇、頭脳戦を好む方なら本作はきっと心に残る作品、忘れられない作品になること必至でしょう。
いかがでしたでしょうか?
このレビューを見て少しでも気になった方、魅力を感じた方は今度の週末にでも是非。^^
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