【書評】アガサ・クリスティー著『蒼ざめた馬』の絶妙トリック(ネタバレ注意よ)
- 2021.02.24
- 書評

どうも、さかいです!
今回は珍しく書評!(笑)
筆者の敬愛する作家のひとり、アガサ・クリスティー著『蒼ざめた馬』について。
本を読んでの感想と、そのトリックについてなんか触れていきたいと思います。
あらすじ
霧の夜、神父が撲殺され、その靴の中に九人の名が記された紙片が隠されていた。そのうち数人が死んでいる事実を知った学者マークは調査を始め、奇妙な情報を得る。古い館にすむ三人の女が魔法で人を呪い殺すというのだ。神父の死との関係を探るべくマークは館へ赴くが…。オカルト趣味に満ちた傑作、新訳で登場。
Amazonより引用
作品を読んでの感想
この作品を一言で表すなら……
オカルトと犯罪トリックの見事な融合!!……の古典(笑)
といったところでしょうか。
で、評価はというと
★★★☆☆
といった具合に少し辛め。(笑)
まず、本作品をざっくりと解説しますと、一見、オカルトのような出来事の中で展開されていく殺人事件です。
今でこそ、よく見かけるようになったミステリ作品にありがちな設定ですが、当時としては斬新だったのでしょう。
しかしながら、現代においては少し物足りないとでもいうかなんというか。
でも、勿論、そこは我らがアガサ・クリスティ-。w
見事なまでの展開で読者の心臓を鷲づかみ!(なんか怖いw)
次の展開が気になってしまい、ついつい最後まで引っ張られていきます。
が、それだけにラストのトリックの種明かしに少し肩すかしというか、犯人なんかも含めて途中からうっすらと頭をよぎっていたので、意外性に乏しかったのが残念でした。
わたくし、さかいも特にサスペンスやミステリ小説を読み漁ったり、決してその道のプロでも専門家でもありませんが(一応、くさっても作家なので専門家ってことになるのかしら。^^;)途中で少し読めてしまっていた部分は否めませんでした。
そんなミステリ初心者(笑)のさかいでさえ、途中で展開を読めてしまっていたのですから、きっと真のミステリ好きなら一目瞭然だったことでしょう。(笑)
とはいえ、時代は変われど優れたプロットであることに違いはありません。
それについては揺るぎないといえるでしょう。
まさに安定と信頼と実績の(笑)アガサ・クリスティー作品です。
ミステリ好きで、かつ、まだ未見の方がいらっしゃいましたら、現代のミステリ作品の古典、礎になった作品として一度は読んでみて損はないでしょう。

面白かった点
- 暗殺組織みたいなのが出てくる
- 三人の魔女(?)たち等キャラクター造形が魅力的
- どんでん返しの連続で読者を飽きさせない
- 薬学の知識が身につく
■暗殺組織みたいなのが出てくる
はい、タイトルにもなってる『蒼ざめた馬』。
これが本作品に出てくる暗殺組織(?)とも呼べる集団の名前ということになります。
最初、聞いたときは、めっさ顔色の悪い馬(笑)が登場する物語なのかな。なんて漠然と思っていた、さかいですが全然、違いました。(笑)
調べてみたところ……。
「ヨハネ黙示録第6章第8節にあらわれる、死を象徴する馬。ヨハネの黙示録の四騎士の一」
とのことらしいです。(本編でも少し触れられていましたが。^^;)
どうせなら、もっと格好いい名前にすればいいのにーとか思いながら読み進めていましたが。
ショッカーとか、何ちゃら幻影旅団とか。(笑)
でも、何歳になっても、殺し屋集団とか暗殺組織とか、そういうワードって心躍るものがあります。
だって男の子だもん♥
重度の中二病患者のさかいとしては、このワードが出てきた時点で及第点と言わざるを得ません。(爆)
■三人の魔女(?)たち等キャラクター造形が魅力的

先述した『蒼ざめた馬』に所属(?)している魔女たちがいるのですが、彼女たちのキャラ設定が秀逸というか濃いというか。w
当然のことながら、ブードゥーや黒魔術さながらのオカルトパワー(?)を駆使する彼女たちが本作品では、真っ先に犯人として疑われます。
というより、読者の目の矛先が一番早くにいく。
そういうふうにできております。
だもんで、途中までは、怪しさ満点の彼女たちが呪術を駆使して被害者たちを葬っていったようにしか見えない。
所謂、噛ませ犬というか、そういう立ち位置の彼女たちではありますが、カムフラージュとして考えるなら三人のキャラクターは、これ以上ないというくらい読者の目を惹きつけるのに一役買っていると言えるでしょう。^^
よく手品なんかのトリックで、『ミスディレクション』などといった言葉があります。
これは目立つ道具かなんかで観客の注意を惹きつけておいて、裏で本物の種を展開するという基本テクニックで(アシスタントとして美女を置くのもそれが理由)ミステリ小説なんかにおいても、こういったことは有効だし定石。
一番、犯人っぽく見える怪しい人物を用意して、あえて読者の注意を惹きつけるというわけですね。
で、最も怪しくなさそうな人物が真犯人というね。
(今でこそ、よく見かけるし既に使い古された展開ですが。^^;)
なので、カムフラージュとして偽の犯人を立てるのであれば、キャラとして目立てば目立つほどよい。となるわけ。
そういう意味では、この三人の魔女たちは十分すぎるほどの役割を果たしたと言えるのではないでしょうか。(笑)
■どんでん返しの連続で読者を飽きさせない
これこそミステリ作品の神髄。
どんでん返しなくして、ミステリ、サスペンスを語るなかれ。
※とはいえ、あんまどんでん返しが多すぎるのも疲れちゃうんですけどね。^^;(笑)
そういった意味では本作も例に漏れることなく、どんでん返しの連続。
特にラストときたら。w
ギリギリまで犯人だと思われていた人物が実は……。
おっと、これ以上は完全なネタバレになってしまうので言いませんが(笑)
やっぱりラストで見せる、どんでん返しっていいですね。^^
これぞミステリの真骨頂って感じです。(笑)
■薬学の知識が身につく

これについては少々、意外でした。
トリックの種明かしとして、タリウムという薬が登場するのですが、アガサ氏の時代で既に、これほどまでの見識が開かれていたことに驚きです。
恥ずかしながら、このタリウムという薬品。
さかいは全然、知りませんでした。(笑)
なので、今回、大変、勉強になりました。^^;
今でこそネットを少し検索すれば、自分の描こうとしている目的にあった薬品なり毒物なりヒットしますが、それに先駆けて氏はやってのけていたのですから。
やはり御大は偉大であるとしか言いようがありません。(笑)
とはいえ、勿論、現代においては薬品を使ったトリックはありふれております。w
というより、悲しいかな。
今更、ドヤ顔で種明かししてみたところで誰も驚かない。(笑)
でも、作家の目線で言わせてもらうと(汗)非常に使い勝手がいいというか、辻褄合わせに都合がいいというか。(笑)
なので、薬品の特性をよく利用したうえで利用するなら、まあ、ギリギリ良いのではないでしょうか。w
しかしながら、これもまた薬物同様、使い方によっては良薬にもなるし、劇薬にもなり得る。
あまりにも、ご都合主義で使ってしまうと読者が興醒めしちゃうし、生半可な知識をひけらかすと、その道に明るい方々から総ツッコミをいただくという、地獄のような展開が待ち受けているわけであります。
レビューなんかあろうものなら、エラいことになるであろうことは火を見るよりも明らか。(笑)
なので、薬物をトリックとして扱おうとしている作家の皆さんは、くれぐれも注意を致しましょう。(笑)
結局、タリウムとは何か?

1898年、パリのレイモン・サブローにより、タリウム塩に脱毛作用があることが発見される。
このため1950年代に至るまで、頭皮の皮膚病を治療する際に用いられる標準的な軟膏となった。
タリウム塩自体には皮膚病を治療する効果はないが、強力な脱毛作用によって頭髪が抜け落ちてしまえば、治療用の薬品を塗布しやすくなるためである。第二次世界大戦以前には、顔面の脱毛クリームとして販売されていたが、製造業者や使用者のタリウム中毒が多発したため、現在ではタリウムを使用した脱毛剤は販売されていない。
Wikipediaより
なるほど、レイモン・三郎か。(笑)
いや、そこじゃないだろうって。w
でも、日本人としては、妙に親近感を持ってしまう名前なんですよね、この発見者の人。w
まあ、それは置いておいて。w
作中では、ヒ素に似た特性を持っていて、ネズミ穫りなんかにも使われていると表現されていました。
青酸カリほどの即効性はないものの、一度、体内に蓄積されてしまうと、あらゆる症状を引き起こすのだそう。
たとえば、インフルエンザのような風邪のような症状を始め、脳卒中、アルコール性神経炎、肺炎、リウマチ、ポリオ、胃潰瘍と様々。
唯一、髪の毛が抜け落ちるという点だけは共通なのだそうです。
人によって症状が多種多様であることから外からも気づかれずらい。
よって暗殺の際のトリックとしては、もってこいというわけですね。
というより、これだけ使い勝手のいい代物も他にないですよね。^^;
いやはや、奥深きかな薬物の世界。
まだまだ勉強が足りないです。^^;

さてさて、いかがでしたでしょうか?
オカルトと薬物、怪しげな暗殺集団。
これらを見事に掛け合わせ、文字通りの化学反応を引き起こしたアガサ・クリスティーの手腕は流石であるとしか言いようがありません。
古典劇とはいえ時代を超えた秀逸さが光ります。
皆さんもどうでしょう?
この週末にでも是非。^^
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