【香澄の秘密部屋】 僕と彼女とバイクと

【香澄の秘密部屋】 僕と彼女とバイクと

「よかったら乗っていかない?」

振り返ったそこには、いつもよりちょっぴり大胆な恰好をした彼女が。

彼女にはバイクがよく似合う。

バイクもまた彼女に乗られて嬉しそうだ。

「香澄さん? どうしてロンドンに?」

「トランジット。たまたまね」

「まさか、また現場を放り出してきたんじゃないでしょうね? あとで小言を言われる僕の身にもなってくださいよ」

「で、乗るの? 乗らないの?」

「しかしですね、僕にはまだ仕事が……」

「かたいこと言わない」

「じゃあ、ちょっとだけ」

「このまま一緒に消えちゃおうか。イヤなこと全部、忘れて」

「え?」

「飛ばすわよ。しっかりつかまってて」

「つ……つかまるって、どこに?」

「それは――」