【香澄の秘密部屋】ドキッ!危険な夏祭り

【香澄の秘密部屋】ドキッ!危険な夏祭り

祭囃子に屋台、人々の賑わい。

混雑を避け、神社の境内で一休みしているときだった。

「何?」

ふと香澄の手が止まった。

「いえ」

僕は慌てて目を逸らした。

「さっきから人の顔、じっと見て」

「特に意味は。なんとなく。アイス、美味しそうに食べるなって」

「そう」

「えぇ」

ちらりと浴衣から覗いた白い素足が艶めかしかった。

気を取り直し、もう一度、アイスキャンディーを顔に近づけようとする。が、どこか落ち着かないらしい。

香澄は頬を染めた。

「あっち向いてて」

「どうしてです?」

「いいから」

「どうして? 何故、見ていてはいけないんです?」

「そんなに見られてたんじゃ落ち着かない」

「隣にいるから目に入るだけです」

「何かイヤ」

「別にいいではありませんか」

「あっち向いてて」

「何故、駄目なんです? さっきまで綿菓子もタコ焼きも普通に食べてたではありませんか」

「早くして。アイスが溶けちゃう」

「わかりましたよ」

「まだ見てる」

「こうですか? これなら文句ないでしょ」

「もっと。お爺様から借りた浴衣が汚れる」

「そんな古い浴衣」

「駄目よ、大切な浴衣だって。そう言ってたし」

「祖母のお下がりらしいです」

「だったら尚更」

ついに先っぽから一滴、垂れた。

更にもう一滴。が、寸でのところで阻止。それを滑らかな舌が絡め取る。ねっとりと。包み込み纏わり付くようにして。

股間の辺りがギュッとなった。

「こら」と香澄。

「今、何を想像したのよ」

「別に何も」

「ウソ」

「香澄さんこそ」

「わたしは普通に舐めただけ」

「いや、舐め方というか」

「じゃあ、どうやって舐めろって言うのよ」

確かに。

今にして思えば普通に舐めていただけかも。

単に自分の心が汚れているだけなのか。それとも相手から醸し出される雰囲気の成せる業なのか。そうなのか、そうじゃないのか。

わからない。

世界の七不思議。人類にとって永遠のテーマだ。

ドン! 遠くで花火が打ち上がった。

盛大な一発目だ。続けて二発、三発と打ち上がっていく。お祭りの醍醐味だ。

幼い頃、この場所から祖父に手を引かれて眺めたのを思い出す。

赤に黄色、緑、色鮮やかな瞬きが夜空を彩っていく。

「あっ」

アイスは完食されていた。

残されたのは棒の部分だけ。しまった。大事なシーンを見逃してしまった。

「残念でした」

ちょっと目を離した隙に。

「ズルイですよ」

「勝負は一瞬で決まるの。気を抜いた方が負け」

「何の話をしてるんです?」

「今度は焼きそばが食べたい。奢って」

下駄の音。紺色の浴衣が石段から立ち上がる。

「どうして僕が?」

また連続した花火が打ち上がった。

光源が美しく整った横顔を照らし出す。やがて、すべてを見透かしたような眼差し。

「罰よ。エッチなこと考えた」