【香澄の秘密部屋】午前三時の女豹

【香澄の秘密部屋】午前三時の女豹

『殺し屋といっても所詮、ただの女だな』

マンハッタンの夜景が一望できた。

一面ガラス張りのホテルで男と女。

『いい気にならないで』

乱れた髪が一本、女の肩を滑り落ちていった。

ぼんやりとした街明かりが汗ばんで上気した肌を艶めかしく照らしている。

『で、どうだった?』

男が煙草に火をつけるついでだった。

『最低だった』

ぶっきらぼうに女。

『最低ね。そういう割には、はじめてとは思えない腰使いだった』

『うるさい』

シーツの上には数滴の薔薇の花びら。

女が喪失したであろう証が今も生々しく咲かせている。

『まだ怒ってるのか?』

『当然よ』

『賭けに負けたんだ。ゲームに代償はつきものだ。そうだろ?』

『けだもの』

『諦めて俺のモノになれよ』

『誰が』

『強情な女だ』

『身体だけよ。心まで許したわけじゃない』

『負けん気が強いんだな』

『余計なお世話よ』

『残念だよ、あんたとはもっと違う形で出会いたかった』

カチッ、背後で撃鉄を引く音がした。

『そうね』

『じゃあ、始めようか。第2ラウンドを』

※フィクションです。本編とは関係ありません。